寺子屋経営塾では、「徳ある経営」を理念として掲げています。
では、その反対にある「不徳の経営」とは、どのような経営なのでしょうか。
先日、ある出来事をきっかけに、そんなことを考えさせられました。
経営というと、売上や利益、集客、マーケティング、組織づくりなど、さまざまな知識や手法が語られます。もちろん、これらは経営を続けていくうえで大切なことです。しかし、その前にもっと大切なものがあるのではないでしょうか。
それは「人としてどうあるか」です。
① 自分のメリットだけを一方的に話す
仕事をしていると、さまざまな提案を受けます。
「これをやれば御社にもメリットがあります」
「お互いにとって良い取り組みになります」
そんな言葉を聞くことも少なくありません。
ところが、内容をよく見てみると、実際には相手側のメリットばかりで、こちらにとって何が良いのかがほとんど考えられていない。それでは「お互いのため」とは言えません。
商売ですから、自社の利益を考えること自体は当然です。
しかし、良い商売とは、自分だけが得をすることではなく、相手にも価値が生まれ、その先のお客様や社会にも良い影響が広がっていくものではないでしょうか。
「自分は何を得られるか」だけではなく、
「相手に何を与えられるか」
を考える。
ここに、徳ある経営と不徳の経営を分ける一つの境目があるように思います。
② 相手によって態度や約束を変える
もう一つ考えたいのが「誠実さ」です。
自分に利益をもたらしてくれそうな人には丁寧に接する。
立場の強い人には頭を下げる。
ところが、自分にとってメリットがないと分かった途端に態度が変わる。約束したことを曖昧にする。返事をしなくなる。
こうした行動は、一つひとつを見れば小さなことかもしれません。
しかし、経営における「信用」は、このような小さな行動の積み重ねによってつくられていきます。
会社の看板を背負って人と接する以上、その人の振る舞いそのものが会社の評価になります。
経営者であれば、なおさらです。
誰が見ているから誠実にするのではない。
得になるから約束を守るのでもない。
誰に対しても誠実である。
その姿勢こそが、長い時間をかけて会社の信用をつくっていくのだと思います。
③ 目先の数字のために信頼を犠牲にする
経営をしていれば、数字を追わなければなりません。
売上を上げたい。
利益を増やしたい。
新しい顧客を獲得したい。
私自身も経営者ですから、その重要性はよく分かります。しかし、数字を追うことと、数字のためなら何をしてもいいということは、まったく違います。
短期的には得をしたように見えても、その方法によって誰かの信頼を失ってしまえば、長い目で見れば大きな損失になります。
一度の取引で得られる利益よりも、
「この人とまた仕事をしたい」
「この会社なら安心して任せられる」
と思ってもらえることの方が、経営においてははるかに大きな財産です。だからこそ、数字が厳しい時ほど、その会社や経営者の「あり方」が問われるのではないでしょうか。
経営について学んでいると、難しい言葉や新しい手法が次々と出てきます。マーケティング、ブランディング、DX、AI、SNS、営業戦略……。時代に合わせて新しい知識を学ぶことは大切です。
しかし、どれだけ優れた手法を知っていても、根本にある人としての姿勢が間違っていれば、いつかどこかで綻びが生まれます。
そんな時、私は非常に単純な問いに戻って考えたいと思っています。
「経営以前に、人としてそれはどうなのか?」
約束を守る。
嘘をつかない。
相手の立場を考える。
感謝を忘れない。
自分だけが得をしようとしない。
当たり前のことばかりです。
しかし、その「当たり前」を続けることこそ、実は一番難しいのかもしれません。
人があってこその経営
会社をつくるのも人です。
商品やサービスを届けるのも人です。
それを買ってくださるのも人です。
一緒に働いてくれるのも人です。
会社が困った時に助けてくれるのも、最後は人です。
つまり、経営とは数字だけで成り立っているのではありません。人と人との関係の上に成り立っています。
だから寺子屋経営塾では、「何をするか」だけではなく、「どうあるか」を大切にしています。
売上を上げる方法を学ぶことも大切。
会社を成長させることも大切。
利益を残すことも当然必要です。
しかし、その成長の過程で大切なものを失ってしまっては意味がありません。
「徳ある経営」というと、少し堅苦しく聞こえるかもしれません。けれど、決して難しいことではないと思います。
相手を大切にする。
約束を守る。
自分だけではなく、周りの人も良くなる方法を考える。
そして、自分たちの仕事を通じて社会に貢献する。
経営のテクニックを学ぶ前に、まず、ちゃんと経営をしよう。
そして、ちゃんと人と向き合おう。
不徳の経営を目にした時こそ、自分自身にも問いかけたいと思います。
「自分たちは、徳ある経営ができているだろうか」
寺子屋経営塾も、その問いを忘れず、これからも「徳ある経営」とは何かを皆さんと一緒に考え続けていきます。



