先日開催された寺子屋経営塾では、例会会場としていつもお世話になっている、浄土宗龍興院副住職の大島慎也氏よりご講演いただきました。
大島慎也氏は、浄土宗龍興院の副住職を務める一方、歯科医師として医療法人社団GOODTIMEの理事を務め、浄土宗総合研究所の研究スタッフ、大正大学の非常勤講師としても活動されています。緩和ケア病棟や介護施設などで患者さんのお話を聞く「傾聴」のボランティア活動にも取り組み、大学では若い僧侶に社会貢献について教えています。
僧侶であり、歯科医師であり、教育者でもある大島氏。講演では、そうしたさまざまな経験を通じて感じてきた「祈り」や「傾聴」、そして人の幸せについてお話しいただきました。
「人の役に立つ」とは何だろう

大島氏にとって大きな転機となったのが、東日本大震災だったそうです。
当時、歯科医師として大学病院に勤務していた大島氏は、被災地への医療支援を希望しました。しかし、まだ若手だったこともあり、現地へ行くことはできませんでした。その時に感じたのが
「自分は役に立てないのか」
という悔しさだったといいます。
そこから
「社会に貢献できることはないか」
「人の役に立つために自分には何ができるのか」
を考えるようになったそうです。
経営をしていても、「自分たちの仕事は誰の役に立っているのか」という問いは、とても大切だと思います。
仕事によって誰が喜び、誰の困りごとを解決し、どのような価値を社会に生み出しているのか。
そこまで考えることが、本業の意味を見つめ直すことにつながるのではないかと感じました。
「話を聞く」ことは、思っている以上に難しい

今回の講演で特に印象に残ったのが「傾聴」のお話です。
大島氏は緩和ケア病棟や介護施設などを訪れ、患者さんの話を聞く活動を続けています。
しかし
「聞く」
と
「傾聴する」
は違います。
相手が本当に伝えたいことに耳を傾ける。自分の意見を挟むのではなく、その人が抱えている苦しみや悲しみまで受け止めようとする。
大島氏自身、学生たちに一年かけて「話を聞くこと」を教えているほど、真剣に人の話を聞くことは難しいと語られていました。
これは経営者にも、そのまま当てはまるのではないでしょうか。
社員の話を「聞いているつもり」になっていないか。
お客様の声を、自分に都合よく解釈していないか。
経営者は話す立場になることが多いからこそ、意識して「聴く力」を持つ必要があるのだと思います。
「祈り」が人の心を支える

大島氏が人生のテーマとしているのが「祈り」です。
祈ったからといって、すべての問題が解決するわけではありません。
それでも、大切な人を亡くした時、苦しい状況に置かれた時、祈ることで心が少し救われることがある。
東日本大震災や緩和ケアの現場でさまざまな人と接する中で、大島氏は
「祈りには人の心を癒す力がある」
と感じるようになったそうです。
これは宗教だけの話ではないように感じました。
誰かの幸せを願う。
困っている人のことを思う。
自分に直接利益がなくても、相手のために何かをする。そうした気持ちも、広い意味では「祈り」に近いものなのかもしれません。
お金では測れない「豊かさ」を考える

現代社会では、多くのものが数字で評価されます。
会社であれば、売上や利益、成長率など、数字は経営を判断するために欠かせません。
しかし大島氏のお話を聞いていると、人の人生には数字では測れない大切なものがあることに改めて気づかされます。
家族との時間
人とのつながり
誰かに必要とされること
心が穏やかであること
大島氏も、これからは「心の豊かさ」や「幸せ」といった、金銭には換算できないものがより大切になるのではないかと語られていました。
企業も同じなのだと思います。
利益を上げることと、人を幸せにすることは対立するものではありません。むしろ、社員やお客様、取引先との信頼関係を大切にし、その人たちの幸せを考え続ける会社だからこそ、長く必要とされるのではないでしょうか。
だからこそ「徳ある経営」を実践する

講演の最後に大島氏が紹介されたのが
「生きとし生けるものが幸せでありますように」
という仏教の考え方でした。
自分だけではありません。
自分の好きな人だけでもありません。
自分とは考え方が違う人も、苦手な人も含め、すべての人の幸せを願う。それが仏教の教えなのだとお話しされていました。
「自分だけが良ければいい」という経営ではなく、社員にも、お客様にも、取引先にも、地域にも、そして社会にも良い影響を与えていく。
そのためには、まず相手の声をしっかりと聴き、相手の立場を考え、その人の幸せを願うことから始まるのではないでしょうか。
経営手法を学ぶことも大切です。
数字を学ぶことも、戦略を学ぶことも必要です。
しかし、その根底に「人を大切にする」という姿勢がなければ、どれだけ優れた手法を学んでも、本当に良い経営にはならないのかもしれません。
人の話を聴く
人の痛みに寄り添う
人の幸せを願う
そして、自分の仕事を通じて誰かの役に立つ
今回の大島氏のお話は、普段とは少し違った「祈り」という視点から、経営者として大切にすべきものを改めて考える機会となりました。
そして、こうした人としてのあり方を日々の経営の中で行動に移していくことこそ、私たち寺子屋経営塾が目指す「徳ある経営の実践」なのだと感じました。
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