先日開催された寺子屋経営塾では、木村周一郎氏よりご講演いただきました。
木村周一郎氏は、1969年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、1991年に千代田生命保険相互会社へ入社し、法人営業などを経験。その後27歳で退社し、米国のAIBで製パンを理論から学びました。ニューヨークのベーカリーやパリでの修行を経て、2000年に株式会社ブーランジェリーエリックカイザージャポンを設立。現在、日本で「メゾンカイザー」を展開されています。
華やかな経歴だけを見ると、順調にパン職人、経営者への道を歩んできたようにも見えます。しかし今回のお話を聞いて感じたのは、決して最初から明確な目標を持って歩んできたわけではなく、その時々に訪れた出来事や人との出会いに向き合いながら、自分の道を切り拓いてきたということでした。
すべての経験は、後になってつながっていく

講演の冒頭では、学生時代から生命保険会社へ入社した頃のお話を、ユーモアを交えながら語ってくださいました。
学生時代は決して勉強熱心だったわけではなく、生命保険会社に入ってから初めて簿記を学び、営業の現場で苦労しながら仕事を覚えていったそうです。
当時は、それらの経験が将来どのように役立つのか分からなかったのではないかと思います。
しかし結果として、金融の知識、数字を見る力、営業力、そして厳しい環境の中で身につけた精神力は、その後経営者として歩んでいくうえで大きな財産になっていきました。
私たちも日々仕事をしていると
「これは何の役に立つのだろう」
と思う経験があります。
けれども、人生を振り返ったとき、一見無関係だった点と点がつながることがあります。
目の前の経験を無駄だと決めつけず、そこから何かを吸収することの大切さを感じました。
「帰る場所がある」という安心感

特に印象に残ったのが、海外で修行していた頃のお話です。
思うようにいかず
「このままパンの勉強を続ける意味があるのだろうか」
と悩んでいた時、かつての仕事で知り合った経営者から
「頑張れ。頑張ってダメだったら、うちの会社に来い」
と言われたそうです。
木村氏は、その言葉によって「帰るところができた」という大きな安心感を得たと話されていました。
この話は、会社づくりにも通じるものがあると感じました。
社員が挑戦できる会社とは、失敗しない会社ではありません。
失敗しても戻ってこられる。
困った時には支えてくれる仲間がいる。
そう思える安心感があるからこそ、人は思い切って挑戦できるのではないでしょうか。
経営者として「挑戦しろ」と言うだけではなく、挑戦できる土台をつくることも大切なのだと思います。
違う環境に飛び込むことで、人は成長する

アメリカ、フランス、イスラエルなど、海外のさまざまな環境で仕事をしてきた木村氏。
そこでは言葉も文化も常識も、日本とはまったく違います。
特にフランスでは、言葉が十分に通じず、仕事の指示すら理解できないところから始まったといいます。
それでも現場で人と関わり、試行錯誤しながら少しずつ言葉を覚え、人間関係を築いていった。
やがて周囲から仲間として認められ、困った時には守ってくれる人まで現れるようになったというお話がありました。
人は、自分が慣れた環境にいるだけでは気づけないことがあります。
自分の常識が通用しない場所に出たとき、初めて自分の強さや弱さにも気づく。
経営者にとっても、異業種の人と交流したり、自分とは違う考え方に触れたりすることは、とても大切なのだと改めて感じました。
AIや機械が進化するほど、「人」の価値が問われる

今回の講演の後半で特に考えさせられたのが、これからの仕事についてのお話でした。
製造技術やAI、ロボットが進化すれば、これまで
「職人にしかできない」
と考えられていた仕事も、機械が高い精度で行える時代がやってきます。
では、その時に人間は何をするのか。
木村氏は、人間は
「人間のケアをする仕事」
をしていかなければならないのではないか、と話されていました。
これはパン屋だけの話ではありません。
どの業界でも、機械に置き換えられる仕事はこれから増えていくでしょう。
だからこそ
人の気持ちを感じること
相手を喜ばせること
安心させること
感動を生み出すこと。
こうした「人にしかできない価値」が、ますます重要になるのだと思います。
木村氏自身も、これからのパン屋を単なる製造販売業ではなく、人の心を動かす「感動産業」へ変えていきたいと語っています。
「また来たい」と思われる価値をつくる

もう一つ興味深かったのが
「美味しいだけでは店は続かない」
という考え方です。
私たちは飲食店を見ると、つい「美味しいか、まずいか」で評価しがちです。
しかし実際に「また行きたい」と思う店には、味以外にも理由があります。
その店の物語、見た目、空間、音楽、スタッフの対応、そしてそこで過ごした時間。
そうしたものすべてを含めて、人は店を好きになるのだというお話でした。
これは、どんな事業にも当てはまるのではないでしょうか。
商品やサービスの機能だけで差をつける時代から
「この会社だから頼みたい」
「この人から買いたい」
と思ってもらえる会社へ。
そこには、人と人との信頼や共感が必要です。
だからこそ「徳ある経営」を実践する

今回のお話を聞きながら、寺子屋経営塾が掲げる「徳ある経営」と重なる部分を多く感じました。
社員が安心して挑戦できる環境をつくること。
自分とは違う価値観に触れ、経営者自身が学び続けること。
お客様の心に寄り添い、「またこの会社と関わりたい」と思ってもらえる関係を築くこと。
そして、時代が変わっても「人にしかできない価値」を追求すること。
そうした一つひとつの積み重ねが、結果として強い会社をつくっていくのだと思います。
寺子屋経営塾では、さまざまな人生を歩んできた経営者の話を聞き
自分ならどう考えるのか。
自分の会社では何ができるのか。
そして、自分はどのような経営者でありたいのか。
そこまで考え、実際の経営へ持ち帰って行動することを大切にしています。
AIや機械が進化し、仕事の形が大きく変わっていくこれからの時代だからこそ、最後に問われるのは「人」なのかもしれません。
人を大切にする。
人を育てる。
人の心を動かす。
そして、本業を通じて周囲をより良くしていく。
今回の木村氏の講演を通して、それこそが、寺子屋経営塾が目指す「徳ある経営の実践」につながっていくのだと改めて感じました。
寺子屋経営塾では「徳ある経営」を共に学び
実践する仲間を募集しています。
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歴史や先人の智慧から学び、お互いに刺激を受けながら
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