先日開催された寺子屋経営塾では、松本紹圭氏より
「産業僧が語るグッド・アンセスター 〜『よき先祖』になるために企業としてできること〜」
というテーマでご講演いただきました。
松本紹圭氏は、東京大学文学部哲学科を卒業後、浄土真宗本願寺派・光明寺で僧侶となり、その後インド商科大学院でMBAを取得。現在は京都・東京を拠点に活動し、武蔵野大学ウェルビーイング学部教授として、仏教思想をはじめ、これからのリーダーシップやAI倫理など、現代社会のさまざまなテーマについて発信されています。2013年には世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーズにも選出されています。
著書には、20カ国以上の言語に翻訳された『お坊さんが教える、こころが整う掃除の本』などがあり、の日本語翻訳も手がけています。近年は、この「よき祖先になる」という考え方を軸に、地域や世代を超えた視点から、私たちが今をどう生き、未来へ何を残していくのかを問い続けています。
今回の講演でも中心となったのが、まさにこの「グッド・アンセスター=よき祖先」という考え方でした。
経営者は、目の前の売上や利益だけではなく、自分たちの会社を次の世代へどのようにつないでいくのか。そして未来の人たちから振り返ったとき、私たちはどのような存在でありたいのか。
これまでとは少し違った時間軸から「経営」を考える、非常に興味深い講演となりました。
未来から考える経営

日々経営に携わっていると、どうしても今月の売上、今期の利益、目の前のお客様や社員のことなど「今」に意識が向きます。
もちろん、それらは経営者として考えなければならない大切なことです。
しかし今回のお話を聞いて感じたのは、経営者にはもう一つ
「自分たちの会社を、その先の世代へどのように渡していくのか」
という視点が必要なのではないかということでした。
「7世代先」から今の判断を考える
講演の中で印象的だったのが「7世代先を考えて意思決定する」という考え方でした。
7世代先と言われると、あまりにも遠く感じます。
しかし、もう少し身近に考えてみれば、子どもや孫、さらにその先の世代が生きる50年後、100年後に、今の自分たちがどんな会社や社会を残しているのかという話です。
経営では、どうしても早く結果を出すことが求められます。
けれども、本当に良い判断とは、今すぐ成果が出るものだけなのでしょうか。
今は少し遠回りに見えても、社員が育つこと、地域との信頼を築くこと、会社の理念や文化を次の世代に残すことには、長い時間が必要です。
「今、自分にとって得かどうか」だけではなく
「この判断は未来に何を残すのか」
その視点を持つことの大切さを感じました。
私たちは「良き祖先」になれるか

今回、特に心に残った言葉が「良き祖先」という考え方です。
私たちは普段、先祖から何を受け継いできたのかを考えることはあります。
しかし講演では、視点を逆にして
「未来の人たちから見たとき、自分たちはどのような祖先になるのか」
という問いが投げかけられました。
これは経営にもそのまま置き換えられると思います。
10年後、30年後、50年後。
未来の社員や後継者が今の会社を振り返ったとき
「あの時代の経営者が、この会社の土台をつくってくれた」
と思ってもらえるのか。
それとも
「あの時代に目先のことばかり考えた結果、こんな問題が残ってしまった」
と言われるのか。
会社を経営するということは、今の自分たちだけのものを動かしているのではなく、未来から一時的に預かっているものなのかもしれません。
すでに多くの「恵み」を受け取っている

もう一つ印象的だったのが
「自分が受け取っている恵みに目を向ける」
というお話でした。
私たちは、自分の努力によって今の自分があると思ってしまいがちです。
しかし考えてみれば、今使っている日本語も、社会の仕組みも、会社の信用も、技術も文化も、自分一人でつくったものではありません。
先人たちが積み重ね、誰かが次の世代へつないできてくれたからこそ、今の私たちがあります。
仏教には、あらゆるものとのつながりの中で私たちは生き、生かされているという考え方があります。
経営者も同じではないでしょうか。
社員がいて、お客様がいて、取引先がいて、地域があり、そしてこれまで会社を支えてきた先人がいる。
そう考えると
「自分の会社」
「自分の成功」
という見方も少し変わってきます。
受け取ったものに感謝し、それをより良い形にして次へ渡す。
そこに経営者としての大きな役割があるのだと思いました。
「三方よし」のさらに先にあるもの

日本の商いの考え方として有名なのが、近江商人の「三方よし」です。
売り手よし、買い手よし、世間よし。
自分だけが利益を得るのではなく、お客様にも喜ばれ、社会にとっても良い商いをするという考え方です。
今回のお話では、その先に
「仏法よし」
という考え方が紹介されました。
講師はこれを、神仏やご先祖など、目に見えない存在まで含めて考えることではないかと解釈されていました。
つまり、目の前にいる人だけでなく、過去に生きた人、これから生まれてくる人まで含めて判断する。
この考え方は、現代の経営にとって非常に大切だと感じます。
自社だけが勝てばいいのではなく、その会社が存在する社会そのものが持続していかなければ、企業も続いていきません。
だからこそ、これからの経営者には、自社の外側まで視野を広げることが求められているのだと思います。
だからこそ「徳ある経営」を実践する

今回のお話を聞きながら、寺子屋経営塾が掲げる「徳ある経営」と非常に深くつながっていると感じました。
「徳ある経営」とは、単に良いことをする経営ではありません。
自社の利益をしっかり生み出しながら、お客様、社員、取引先、地域、社会にとっても価値のある会社をつくっていく。
そして今回の講演を通じて、その視点をさらに未来へ広げることの大切さに気づかされました。
今の社員だけではなく、これから働く社員へ。
今のお客様だけではなく、これからの地域へ。
そして、自分がいなくなった後の社会へ。
「自分たちは何を残すのか」
「未来の人たちから見て、良い経営者だったと言ってもらえるのか」
この問いを持ち続けることも、徳ある経営の実践なのだと思います。
寺子屋経営塾は、様々な講師のお話や仲間との学びを通じて、一度日常の経営から視点を離し
「そもそも何のために会社を経営しているのか」
「どのような会社を未来へ残したいのか」
を考える場所でもあります。
私たちは多くのものを先人から受け取って、今を生きています。
だからこそ、それを自分たちの代で使い切るのではなく、より良い形にして次の世代へ渡していく。
本業を通じて社会に貢献し、未来に価値を残す。
そしていつの日か、未来の世代から「良き祖先だった」と思ってもらえる経営をする。
それこそが、寺子屋経営塾が目指す「徳ある経営の実践」の一つの姿なのではないかと、改めて考えさせられる講演となりました。
寺子屋経営塾では「徳ある経営」を共に学び実践する仲間を募集しています。
経営には、売上や利益だけでは語れない「本質」があります。
歴史や先人の智慧から学び、お互いに刺激を受けながら「本業を通じて社会に貢献する経営」を実践したいと考える方は
ぜひ一度、寺子屋経営塾の活動をご覧ください。
活動内容や入会については、下記ページよりご確認いただけます。
寺子屋経営塾はこちら
ぜひ私たちと共に「徳ある経営」を社会へ広げていきましょう




