先日の寺子屋経営塾では
宮城県気仙沼市でデニム製品の企画・製造を行う
及川デニム 代表取締役 及川洋氏をお迎えして
お話しを伺いました。

講演を聞いていて感じたのは
順風満帆に成長してきた企業の成功談ではなく
何度も訪れた危機や失敗
人との出会いの中から「気づき」を得て
そのたびに会社のあり方を変えてきた歩みでした。
そしてその先にあったのは
「自分たちの会社だけが良ければいい」
という経営ではなく、地域、人、技術を
次の世代へどうつないでいくのかという問いでした。
当たり前がなくなったとき、初めて見えたもの
創業以来、長くものづくりを続けてきた及川デニム。
しかし、海外への生産移転が進む中
それまで当たり前にあった仕事が突然なくなり
会社存続の危機を迎えた時期があったそうです。
「自社は大丈夫だろう」
そう思っていた中で
仕事がなくなるわずか3日前に終了を告げられ
その日やる仕事すらない状況になったというお話は
経営者として考えさせられるものがありました。
ところが、その危機の中で行ったことが
その後の会社を変えていきます。
仕事がない中、従業員が自分や家族のために
一着の服を最初から最後までつくったことで
それまで流れ作業の中では
見えなかったことに気づいたそうです。
作業員から職人へ

危機は決して望むものではありません。
しかし、苦しいときだからこそ
それまで見えなかった会社の強みや
人の可能性に気づくことがある。
経営において大切なのは
起きた出来事そのものではなく
そこから何を学び
次の行動へどう変えていくかではないかと感じました。
地域の企業として何ができるか

そして2011年、東日本大震災が発生します。
会社には地域住民など約150名が避難してきました。
もともと避難所ではなかったため
水も電気もなく、十分な物資もない。
その状況の中で行政へ働きかけ
正式な避難所として認めてもらい
自分たちで運営を続けたというお話しがありました。
その経験を通じて生まれたのが
「地元の企業として、一体何ができるのか」
という問いでした。
震災後、自社のブランドを立て直すことよりも先に考えたのは
地域の人たちがもう一度働き日常を取り戻すこと
だったといいます。
経営者であれば、会社を守らなければなりません。
しかし、会社は地域や社会から切り離されて
存在しているわけでもありません。
自社が持っている技術、人、場所を使って
目の前の社会に何ができるのか。
「本業を通じて社会に貢献する」とは
こういうことなのかもしれないと感じるお話でした。
人を採るのではなく、人が育つ環境をつくる

震災後、地域の雇用を生み出そうと
経験や年齢を問わず人を募集したものの
なかなか人が集まらなかったそうです。
そこで地元の漁師から言われたのが
「明日から漁師と言われたら、できる?」
という言葉でした。
この一言から、未経験者にいきなり
職人の仕事を求めていたことに気づき
まず練習できる環境をつくることへ発想を変えていきます。
この話は、人材育成にも通じるものがあります。
「なぜできないのか」
と相手を見るのではなく
「できるようになるための環境を自分たちは用意できているのか」
と自分たちに問い直す。
人を育てるということは
単に仕事を教えることではありません。
失敗できる場所をつくり、経験を積ませ
少しずつ自信を持たせていく。
経営者自身の「気づき」が変われば
人の可能性を引き出す方法も変わるのだと感じました。
価値がないものに、新しい価値を生み出す

地域でこれまで廃棄されていた素材などに
新しい価値を生み出していく
取り組みも紹介していました。
印象的だったのは
単に「新しい商品をつくる」
という発想ではなかったことです。
「地域に何ができるのか」
「自分たちの技術だからこそ、何ができるのか」
という問いから始まっています。
お金は大切な基準ではあるけれど
それがすべてではない。
これまで価値がないと思われていたものに命を吹き込み
新しい仕事を生み、地域の魅力として発信していく。
これは、地方の中小企業にとって
大きなヒントだと思います。
新しいものを外から持ってくるだけではなく
自分たちの足元にあるものをもう一度見直してみる。
そこには、まだ誰も気づいていない価値が
眠っているのかもしれません。
「何を残すか」ではなく「何をつなぐか」
今回のお話の最後に語られたのが
「次世代へどうつなげるのか」
ということでした。
講師自身も、代表となってから
「どんな形で、どんな環境で次世代につなげられるのか」
を考え続けているといいます。
そして、商品だけではなく
これまで培ってきた技術や感性を次につなぐことこそが
本当の意味での持続可能性なのではないかと語られていました。
会社を経営していると、どうしても「今」に追われます。
今月の売上
今期の利益
目の前の仕事
もちろん、それらは大切です。
しかし経営者にはもう一つ
「自分たちは次の世代に何を渡すのか」
という役割があるのではないでしょうか。
技術をつなぐ
人を育てる
地域を守る
志を伝える
自分の代だけで終わらせず
未来へバトンを渡していく。
今回のお話を通じて、経営とは
「今の会社を良くすること」
だけではなく
「未来に何をつなぐのか」
を考えることでもあるのだと感じました。
今回の講演には、寺子屋経営塾が大切にしている
「徳ある経営」と重なる部分が数多くありました。
危機から学び、自分たちを変えること。
社員が成長できる環境をつくること。
地域の課題に対して自分たちの本業で何ができるのかを考えること。
そして、自分たちが培ってきたものを次の世代へつないでいくこと。
どれも派手な経営手法ではありません。
しかし、こうした一つひとつの積み重ねこそが
長く社会から必要とされる企業を
つくっていくのではないでしょうか。
寺子屋経営塾が目指しているのも
知識やノウハウを学んで終わる場所ではありません。
様々な経営者の経験や生き方に触れ
そこから自分自身が「気づき」を得る。
そして、その気づきを自社へ持ち帰り行動に変えていく。
会社を良くする。
働く人を幸せにする。
地域や社会に貢献する。
そして、次の世代へより良いものを残していく。
それが、寺子屋経営塾の掲げる
「本業を通じて社会に貢献する」
ということでもあり
「徳ある経営の実践」なのだと思います。
今回の講演は、経営者として
「自分は何を未来へつないでいくのか」を
改めて考える機会となりました。

寺子屋経営塾では「徳ある経営」を共に学び
実践する仲間を募集しています。
経営には、売上や利益だけでは語れない「本質」があります。
歴史や先人の智慧から学び、お互いに刺激を受けながら
「本業を通じて社会に貢献する経営」を実践したいと考える方は
ぜひ一度、寺子屋経営塾の活動をご覧ください。
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