先日開催された寺子屋経営塾では、足立信行氏より
「仏教経営宣言 ~仏教を学ばずして事業経営の成功なし~」
というテーマでご講演いただきました。
足立信行氏は、1982年京都府生まれ。18歳で高野山に入り僧侶になることを決意し、高野山大学人文学部密教学科、高野山専修学院を卒業。
高野山金剛峰寺の布教研修を修了し、本山布教師も務められています。現在は高野山真言宗の阿闍梨として活動する一方、株式会社T-sousaiの代表取締役社長として、経営者としての顔も持っています。
高野山での修行後は、一度山を下り、四国八十八ヶ所をはじめ各地の寺院を訪ねながら、「社会に必要とされる寺院とは何か」を考え続けてきました。その後、葬儀会社で年間約120件の葬儀を担当し、さらにIT企業ではエンジニアとして勤務するなど、仏教の世界だけにとどまらない多様な経験を重ねています。2017年には株式会社T-sousaiを創業しました。
また、弘法大師・空海の思想を原典から研究し、その考え方を現代の経営にどう生かすことができるのかについても探究されています。仏教を単なる信仰として捉えるのではなく、長く続く組織づくりや経営者としてのあり方、人や社会との向き合い方を考えるための知恵として捉えている点も、足立氏の大きな特徴です。
今回の講演でも、そうした経験をもとに、仏教と経営という一見異なる二つの世界をつなぎながら、経営者が自分自身をどう磨き、人とどう関わり、何を信じて事業を続けていくのかについてお話しいただきました。
「仏教経営」という言葉だけを聞くと、少し難しく感じるかもしれません。
しかし実際にお話を聞いてみると、その根底にあったのは、経営のテクニックではなく、経営者としてどう生きるのか、どう在るのかという、とても本質的な問いだったように感じます。
「仏教」と「経営」

一見すると、まったく違う世界の話のようにも感じます。しかし今回のお話を聞いて感じたのは
仏教とは単なる信仰の話ではなく
経営者としてどう生きるのか
どう人と向き合うのか
そして自分自身とどう向き合うのかを考えるための多くのヒントが詰まったものだということでした。
仏教は約2500年という長い歴史の中で時代や国を越えて受け継がれてきました。
社会が大きく変化し、これまでの成功法則が通用しなくなっている現代だからこそ、目先のテクニックだけではなく、長い歴史の中で受け継がれてきた普遍的な考え方に目を向けることが大切なのかもしれません。
経営者にとっての「修行」

今回のお話の中で、まず印象に残ったのが「修行」についてのお話でした。修行とは単なる根性論や体力訓練ではない。そして「修行には終わりがない」。
これは経営にもそのまま当てはまる言葉だと感じました。
会社を立ち上げたら終わりでもなければ
売上が上がったら終わりでもありません。
人を雇えば新しい課題が生まれ、会社が成長すれば、また次の課題が現れます。
経営者自身も常に学び続け、成長し続けなければならない。
つまり経営そのものが
一つの「終わりのない修行」
なのかもしれません。
また、本当の修行とは自分自身と向き合うことだという話もありました。
会社の経営が順調なときには自信を持って様々なことを語ることができます。
しかし、本当に苦しい状況になったとき
自分はどのような判断をするのか。
自分の弱さから逃げずそれでも前へ進めるのか。
経営を続けていれば必ず思い通りにならないことが起こります。だからこそ、経営者には自分自身を鍛え続けることが必要なのだと感じました。
一人では経営できない

続いて印象に残ったのが「集団」についてのお話です。
仏教は、お釈迦様の時代から「僧伽(サンガ)」という集団をつくり、その中で教えを伝え、実践してきたといいます。
その話から改めて感じたのは
どれだけ優秀な経営者であっても一人だけでは事業を続けていくことはできないということです。
社員がいて
お客様がいて
取引先がいて
応援してくれる仲間がいる
会社とは、様々な人との関係の中で成り立っています。
だからこそ、組織には共通の目的が必要であり、それぞれが自分の役割を持って貢献し、そして互いにコミュニケーションを取ることが大切になる。これは現代の組織論として聞いても非常に納得できるお話でした。
同時に、組織を率いる経営者自身が
「自分は正しい」
と思い込まないことも大切なのだと思います。今回のお話の中には、自分自身の行動を振り返り
「これでいいのだろうか」
と問い続けることの重要性についても触れられていました。
答えを一度出して終わるのではなく問い続ける。経営者にとって、とても大切な姿勢だと感じます。
「信心」とは、自分と人を信じる力

そして最後のテーマが「信心」でした。
ここで語られた「信心」は、単に何かを信仰するという意味ではありません。
自分自身を信じること。
自分が掲げた志を信じること。
そして、仲間から信頼されること。
事業を続けていれば、当然うまくいかない時期があります。
そんなときに
「自分ならできる」
「この事業には意味がある」
と信じ続けられるか。
そして、自分だけが信じているのではなく、一緒に働く仲間や周囲の人からも信頼される人間であるか。
事業を長く続けていくためには、数字や戦略だけではなく、こうした人間としての土台が必要なのだと改めて考えさせられました。
だからこそ「徳ある経営」を実践する

今回の講演を聞きながら、寺子屋経営塾が掲げている「徳ある経営」と、仏教経営には重なる部分が多いと感じました。
経営というと、どうしても売上、利益、マーケティング、組織戦略などに目が向きます。もちろん、それらは会社を存続させるために必要です。
しかし、それ以前に大切なのは
「自分は何のために経営しているのか」
「この事業を通じて、誰を幸せにしたいのか」
「社会にどのような価値を残したいのか」
そして
「自分自身は、どのような経営者でありたいのか」
ということではないでしょうか。
経営者自身が学び続け、自分を磨き続ける。
仲間を大切にし、信頼関係を築く。
自分の志を信じ、本業を通じて社会に価値を生み出していく。
そして、常に「これでいいのか」と自分自身に問い続ける。
それこそが、寺子屋経営塾が目指している「徳ある経営の実践」なのだと思います。
知識として学んで終わるのではなく、自分の会社へ持ち帰り行動に変えていく。経営者として、人として、昨日より少しでも成長する。
寺子屋経営塾もまた、経営者同士が学び合い、実践し、お互いを高め合っていく場所です。
今回の講演を通じて「徳ある経営」とは完成された答えではなく、経営者が生涯をかけて実践し続けるものなのだと改めて感じる時間となりました。

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